読書「ルキリウスへの手紙/モラル通信」(ストア派哲学者セネカ)
哲学に興味がある方へ
本記事は以下のような興味がある方に向けて書きました。
- 哲学にちょっと興味がある、でも難しいのは嫌だ
- 昔の人の知恵を知りたい、そして自分の人生に生かしたい
- 2000年以上も大事に受け継がれてきた哲学者の文章に興味がある
長く伝わる文章にこそ叡智がある
セネカは2000年ほど前に生きた哲学者です。
ルキウス・アンナエウス・セネカ(紀元前1年頃 - 65年 4月)は、ユリウス・クラウディウス朝時代(紀元前27年 - 紀元後68年)のローマ帝国の政治家、哲学者、詩人。Wikipedia - ルキウス・アンナエウス・セネカ
(Jean-Pol GRANDMONT - 自ら撮影, CC 表示 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=27620840による)
「ルキリウスへの手紙/モラル通信」は現存するセネカの124通の手紙を翻訳した本です。
- 昔の人の考えだから古臭い
- 現代には通用しない、今の時代には合わない
などと考えてしまうともったいないです。
それだけの価値があると認められて、淘汰されずに 2000年も残り続けてきた文章なのです。
目次
目次を見て手紙の内容が少し想像できると思います。セネカの124通の手紙にはもともとタイトルはついてないため、訳者の方がタイトルをつけているようです。
また「セネカ 道徳書簡集―倫理の手紙集」という本もセネカ124通の手紙の訳本ですので比較してみました。比較することで、訳の違いの傾向が少しイメージできると思います。
No | 「道徳書簡集」 | 「ルキリウスへの手紙」 |
---|---|---|
001 | 時間の節約について | 時間は唯一の資産 |
002 | 読書の散漫について | 読書について |
003 | 真の友情と偽の友情について | 友情について |
004 | 死の恐怖について | 真の豊かさとは |
005 | 哲学者の中庸について | 哲学が約束すること |
006 | 知識の共有について | 生き方を学ぶ |
007 | 大衆について | 内面に見出す価値 |
008 | 哲学者の隠遁について | 哲学の使命 |
009 | 哲学と友情について | 自己に充足する |
010 | 自分自身で生きることについて | 自己の進歩 |
011 | 羞恥の赤面について | 生き方のモデル |
012 | 老年について | 毎日を最後の日として |
013 | 謂れのない恐怖について | 恐怖の克服について |
014 | 世の中を引退する理由について | 避難場所としての哲学 |
015 | 筋肉と頭脳について | 心身へのきくばり |
016 | 哲学、ないし生活の指針について | 哲学は人生への指針 |
017 | 哲学と富について | 望ましき貧困 |
018 | 祭りと断食について | 貧困の訓練 |
019 | 俗世の生活と引退について | 社会からの撤退 |
020 | 教えの実践について | みずからの哲学を生きる |
021 | 手紙のもたらす栄誉について | 困難のもとは自分に |
022 | 中途半端な遣り方の無益さについて | 野心は奴隷精神 |
023 | 哲学の真の喜びについて | 内面からの喜び |
024 | 死を軽視することについて | 不安の克服 |
025 | 心の改造について | 真の同伴者 |
026 | 老年と死について | 死を学ぶ |
027 | 永続きする善について | 自分の人生の完成 |
028 | 不満を治す旅について | 自己認識はすべての始まり |
029 | 友人マルケリヌスの危期について | 大衆的賞賛について |
030 | 死に勝つことについて | 心安らかに人生から立ち去る |
031 | 魔女サイレンの歌声について | ライフ・スタイルの確立 |
032 | 心の進歩について | ほんとうの幸福 |
033 | 格言を学ぶことの無益さについて | 学者批判と自立した思案 |
034 | 前途有望な弟子について | 生き方と善の実現の一務 |
035 | 同じ心の持主の友情について | 自己との調和 |
036 | 引退の価値について | 死と永劫回帰 |
037 | 理性に従うことについて | 全力で活路を切り開く |
038 | 静かな会話について | 小さな言葉を豊かな思索へ |
039 | 過度と適度について | 自然の節度 |
040 | 哲学者の談話にふさわしい話し方について | 思索を穏やかに語る |
041 | われらの内なる神について | 賢者は超人的存在 |
042 | 真の価値について | 虚栄の資産 |
043 | 良心のやましさについて | 生き方の評価 |
044 | 哲学と家柄について | ほんとうの高貴さ |
045 | 詭弁について | 詭弁術批判 |
046 | ルキリウスの新しい著作について | ルキリウスの著作評価 |
047 | 主人と奴隷について | 奴隷とのつきあい |
048 | 哲学者にはふさわしくない詭弁について | 言葉遊びと真の哲学 |
049 | 人生の短さについて | 真実を表現する素朴な言葉 |
050 | われわれの盲目とその治療について | 魂の治癒 |
051 | 歓楽地と良き性格について | 歓楽の街バイエス |
052 | 教師を選ぶことについて | 自己の改良と哲学 |
053 | 心の障害について | 病んだ魂と哲学 |
054 | 呼吸困難(喘息)と死について | 運命への愛 |
055 | ヴァティアの別荘について | 別荘地にて |
056 | 閑静なことと勉強について | 騒音と内面の静穏 |
057 | 旅の試練について | トンネル初体験 |
058 | 存在について | プラトン哲学批判 |
059 | 快と喜びについて | 健全な精神とは |
060 | 災いの祈りについて | 自然の法則と私利私欲 |
061 | 死を喜んで迎えることについて | より良き死を求めて |
062 | 良き交わりについて | 自分自身であること |
063 | 友を失った悲しみについて | 友人の死に際して |
064 | 哲学者の仕事について | 精神的遺産の引きつぎ |
065 | 第一の原因について | 自分探求、そして世界の起源を |
066 | 徳の諸相について | 美徳について |
067 | 不健康と、苦痛に堪えることとについて | 勇気という美徳 |
068 | 英知と閑暇な生活について | 最良の旅立ちのために |
069 | 安静と動揺について | 彷徨のいましめ |
070 | 死ぬべき適時について | 死ぬ自由と勇気 |
071 | 最高善について | 高潔な生き方 |
072 | 哲学の敵である実務について | 魂の健康について |
073 | 哲学者と帝王について | 神々への接近 |
074 | 世俗的な娯楽からの逃げ場としての徳について | 運命の受容 |
075 | 心の病について | 率直な語り/実感を言葉に、言葉を実感し・・・ |
076 | 古の英知を学ぶことについて | 生涯、より良い生き方を学ぶ |
077 | 自分の命を取ることについて | 世界は劇場、人生はドラマ・・・ |
078 | 心を癒す力について | 病苦の克服 |
079 | 学問上の発見の報酬について | 美徳の実現 |
080 | 世の中のまやかしについて | ほんとうの人間的価値 |
081 | 善行(または恩恵)について | 恩恵への感謝 |
082 | 死への自然の恐怖について | 死を克服する勇気 |
083 | 酔払いについて | 飲酒について |
084 | 諸種の思想の収集について | 読むこと、書くこと |
085 | 幾つかの空虚な三段論法について | 災悪は自由の放棄 |
086 | 偉人スキピオの質素な別荘について | スキピオの別荘にて |
087 | 質素な生活に賛成する若干の議論について | 自己偽善の反省 |
088 | 自由な勉強と職業の勉強について | 学芸批判と哲学 |
089 | 哲学の各部分について | ライフ・スタイルに規律を |
090 | 人間の進歩において哲学の演じた役割について | 歴史の起源を求めて |
091 | ルグドゥーヌムの大火から学ぶべき教訓について | 破局の覚悟を/リヨンの大火事 |
092 | 幸福な生活について | 苦痛の中での幸福 |
093 | 人生の長さに対するその質について | 太く短く生きる充実した人生 |
094 | 忠告の価値について | 教えと忠告について1 |
095 | 基本原理の有益性について | 教えと忠告について2 |
096 | 苦難に直面することについて | 必然の災悪に立ち向かう |
097 | 時代の堕落について | 時代の腐敗について |
098 | 運命の気紛れについて | 喪失や滅亡はなぐさめ |
099 | 子供を失った人への慰めについて | 死別の悲しみの克服 |
100 | ファビアヌスの書物について | 文体とライフ・スタイルの一致 |
101 | 予め計画を立てることの無益さについて | 毎日自己の最良の実現を |
102 | 不死をそれとなく知らせることについて | 名声と称賛について |
103 | 人間が人間と付き合うことの危険について | 危害の予期 |
104 | 健康の注意と心の平静について | 旅行の精神的効果 |
105 | 自信を持って世間に対処することについて | 邪念について |
106 | 徳の物体性について | 新刊の予告 |
107 | 普遍的な意志に従うことについて | あらゆる事件は不可避 |
108 | 哲学への接近について | 若き日々の回想 |
109 | 賢者との交友について | 賢者の助け合い |
110 | 真の富と偽の富について | 裕福は虚栄 |
111 | 頭の体操の空虚さについて | 孤高の頂きに存在する哲学 |
112 | 悪習に固まった人間の改造について | 更生不可能な悪徳 |
113 | 心の活力とその属性について | ストア派内の論争 |
114 | 性格を映す鏡としての文体について | 現代風潮、著者のライフ・スタイルとそして文体 |
115 | 上辺の幸福について | 文体への過度な配慮 |
116 | 自制について | 情熱について |
117 | 論理の巧妙さ以上に勝れている真の倫理について | 言葉の浪費、無用な議論 |
118 | 高位を求めることの空しさについて | 善とは何か |
119 | われわれの最善の供与者としての自然について | 自然の欲求と調和 |
120 | さらに徳について | 美と高潔について |
121 | 動物の本能について | 動物の自己への配慮のすばらしさ |
122 | 邪悪を隠すとばりとしての闇について | 昼夜逆転した生活 |
123 | 快と徳との争いについて | 不測の事態は魂の試練 |
124 | 理性によって得られる真の善について | 自分に固有な善の実現を |
感想
6章までしか読んでませんが。
- 読みやすい
- 口語調で意訳っぽい
- 文体は「セネカ 道徳書簡集―倫理の手紙集」の方が好み
- 本のサイズは辞書サイズで大きいが「セネカ 道徳書簡集―倫理の手紙集」よりはコンパクト(ギリギリ持ち運びできるかも)
もう少しセネカについて知りたいので「セネカ 現代人への手紙」「ローマの哲人 セネカの言葉」という本を読んでみたいと思います。
参照
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