読書「セネカ 道徳書簡集―倫理の手紙集」、そして時間の大切さ

セネカ という哲学者に興味を持ったので「セネカ 道徳書簡集―倫理の手紙集」という本を読んでいます。哲学と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、2000年も受け継がれて残ってきた文章なので、なるほど大事なことが書かれており共感しました。

内容紹介

書籍の紹介文から引用。

「道徳書簡集」は現存する124通の手紙を収め、セネカ最晩年の作とされる。多事多難の生涯にわたって長年体験し考え続けてきた思想を、平易に、簡潔に、それでいて俗には堕さず、学問的色彩も失わずに説く。本邦初の全訳。

ほんの10章程度しか読んでないのですが、次のように感じました。

  • 手元に置いて繰り返し読みたくなるような文章
  • とても読みやすい
  • Amazonのレビューには翻訳があまり良くないと書いてあるが問題ない
  • 内容が全部理解できると思って読まずに、2000年も残されてきた文章への興味で読むと良い

最初の章の「時間に節約について」は特に気に入ったので前半部を抜粋します。

001:時間の節約について

ルキリウス君。

君はこうなさったらよいでしょうーーー

自分自身のために自分を自由にし、今までに君から奪い去られ、盗み取られ、あるいは逃げ去った時間を拾い集め、それを守ることです。

 

次に書くような僕の言葉の真実を、ご自分に説得してください。 或る時間はわれわれから裂き取られ、或る時間は運び去られ、また或る時間は流れ去る。 しかし、なかんずく最も恥ずべき時間の損失は、怠慢によって生ずるそれです。

 

またもし、よく気を付けて見るならば、人生の最も大きな部分が良からぬ事をしている間に、またその大きな部分が何もしていない間に、また人生全部が何かつまらぬ事をしている間に、消え失せていることが分かるでしょう。

 

君は誰を僕に教えてくれるでしょうかーーー

いやしくも時間に何らかの価値を認める人を、毎日毎日を重んずる人を、自分が日々死につつある事を知っている人を。 死を遠くに見るなどと思ったら大間違いですから。死の大部分はすでに通り過ぎてしまっているのです。 どれだけの年月が残されていようとも、死がそれを支配しているのです。

 

それゆえ、わがルキリウス君、君はお手紙に書いているような、現に自分で行なっていることを行うがよい。 つまり、毎時毎時をしっかりと抱きしめることです。君がもし今日のことに手をかけているならば、明日のことには余り頼らなくなるでしょう。 愚図々々している間に、人生は走り過ぎ去って行くのです。

 

ルキリウス君、あらゆるものは他者のものですが、時間だけはわれわれのものです。

私は読書が好きなので色々な本を読みますが「002:読書の散漫について」も、読んでいてハッとさせられる内容でした。

目次

001:時間の節約について

002:読書の散漫について

003:真の友情と偽の友情について

004:死の恐怖について

005:哲学者の中庸について

006:知識の共有について

007:大衆について

008:哲学者の隠遁について

009:哲学と友情について

010:自分自身で生きることについて

011:羞恥の赤面について

012:老年について

013:謂れのない恐怖について

014:世の中を引退する理由について

015:筋肉と頭脳について

016:哲学、ないし生活の指針について

017:哲学と富について

018:祭りと断食について

019:俗世の生活と引退について

020:教えの実践について

021:手紙のもたらす栄誉について

022:中途半端な遣り方の無益さについて

023:哲学の真の喜びについて

024:死を軽視することについて

025:心の改造について

026:老年と死について

027:永続きする善について

028:不満を治す旅について

029:友人マルケリヌスの危期について

030:死に勝つことについて

031:魔女サイレンの歌声について

032:心の進歩について

033:格言を学ぶことの無益さについて

034:前途有望な弟子について

035:同じ心の持主の友情について

036:引退の価値について

037:理性に従うことについて

038:静かな会話について

039:過度と適度について

040:哲学者の談話にふさわしい話し方について

041:われらの内なる神について

042:真の価値について

043:良心のやましさについて

044:哲学と家柄について

045:詭弁について

046:ルキリウスの新しい著作について

047:主人と奴隷について

048:哲学者にはふさわしくない詭弁について

049:人生の短さについて

050:われわれの盲目とその治療について

051:歓楽地と良き性格について

052:教師を選ぶことについて

053:心の障害について

054:呼吸困難(喘息)と死について

055:ヴァティアの別荘について

056:閑静なことと勉強について

057:旅の試練について

058:存在について

059:快と喜びについて

060:災いの祈りについて

061:死を喜んで迎えることについて

062:良き交わりについて

063:友を失った悲しみについて

064:哲学者の仕事について

065:第一の原因について

066:徳の諸相について

067:不健康と、苦痛に堪えることとについて

068:英知と閑暇な生活について

069:安静と動揺について

070:死ぬべき適時について

071:最高善について

072:哲学の敵である実務について

073:哲学者と帝王について

074:世俗的な娯楽からの逃げ場としての徳について

075:心の病について

076:古の英知を学ぶことについて

077:自分の命を取ることについて

078:心を癒す力について

079:学問上の発見の報酬について

080:世の中のまやかしについて

081:善行(または恩恵)について

082:死への自然の恐怖について

083:酔払いについて

084:諸種の思想の収集について

085:幾つかの空虚な三段論法について

086:偉人スキピオの質素な別荘について

087:質素な生活に賛成する若干の議論について

088:自由な勉強と職業の勉強について

089:哲学の各部分について

090:人間の進歩において哲学の演じた役割について

091:ルグドゥーヌムの大火から学ぶべき教訓について

092:幸福な生活について

093:人生の長さに対するその質について

094:忠告の価値について

095:基本原理の有益性について

096:苦難に直面することについて

097:時代の堕落について

098:運命の気紛れについて

099:子供を失った人への慰めについて

100:ファビアヌスの書物について

101:予め計画を立てることの無益さについて

102:不死をそれとなく知らせることについて

103:人間が人間と付き合うことの危険について

104:健康の注意と心の平静について

105:自信を持って世間に対処することについて

106:徳の物体性について

107:普遍的な意志に従うことについて

108:哲学への接近について

109:賢者との交友について

110:真の富と偽の富について

111:頭の体操の空虚さについて

112:悪習に固まった人間の改造について

113:心の活力とその属性について

114:性格を映す鏡としての文体について

115:上辺の幸福について

116:自制について

117:論理の巧妙さ以上に勝れている真の倫理について

118:高位を求めることの空しさについて

119:われわれの最善の供与者としての自然について

120:さらに徳について

121:動物の本能について

122:邪悪を隠すとばりとしての闇について

123:快と徳との争いについて

124:理性によって得られる真の善について

感想

  • この文章が長い間受け継がれてきた理由が感じられる
  • 知恵と人生経験が凝縮されている
  • 時々図書館から借りて研究したい
  • 本のサイズは辞典サイズ、重さは1kgを超えていて持ち運ぶのには向いてない。

セネカの手紙の翻訳書籍として「ルキリウスへの手紙」という本もあるので、読み比べてみると良さそうです。

参照

図書館の予約を便利にするアプリの紹介

私は図書館をよく利用するのですが、この本も図書館から借りました。本が図書館にあるかAndroidアプリ 図書さがし(Google Play)で簡単に調べることができて便利です。

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